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時計が精密な工業製品である以上はメンテナンスは必須であり、中には世界中の様々な時計師の手を経て受け継がれている物もあるでしょう。
手許の時計に今起きている故障やトラブルの原因がお客様の操作方法や落下等の事故に起因する場合には原因が明白ですので修理の完遂に危惧する事はありません。
むしろ、プライドや誠意に欠ける時計師によって適当に作業され、壊されたり、誤魔化された時計の方が修理の難易度は高くなり、場合によっては元の性能を再現する事が不可能な場合すらあります。


『時計を壊すのは時計師』


そんな不名誉な言葉がある位です。


当然ながら、その様なリスクは可能な限り回避する必要がありますが、 


『一体、何処へ依頼するのがベストなのか?』


と悩む事もあるかと思います。


実は時計修理を請負う側にも様々な形態があり、大別すると、


◆ メーカー修理
◆ 時計修理会社
◆ 時計店
◆ 時計材料店
◆ Webのみで展開してる業者


ほぼ、上記のカテゴリーに分かれると思います。


メーカー修理や時計修理会社として30年以上この業界に携わっている立場から、それぞれの特徴を挙げてみますので、参考程度にお読み下さい。

 

メーカー修理

○メリット

最新の情報を元に適正な設備を使用し、専門のトレーニングを受けた時計師により、最新の純正部品を使用した修理やメンテナンスを受ける事ができます。

保証に関しても最も安心感があるので、まずはメーカー修理が最善である事は間違いありません。

メーカー修理と聞くと闇雲に料金が高額に感じられるかもしれませんが、実情を知ると最もリーズナブルだと言えます。

実はメーカーのサービス部門はスペースの確保や最新の設備や人件費で、とても独立採算が可能な部門ではありません。

仮にそれらを賄える料金に設定するとなると、かなり非現実的な料金設定となり、高額なサービス料金では本業の時計販売の足枷となる可能性が高まりますので、単一部門では損失が生まれる事を容認した料金設定とせざるを得ません。

つまり、メーカーは製品販売を含めたトータルでの収支と捉え、サービス部門はあくまで顧客サービスの一環として割り切る事で本来よりも低料金での提示をしている事が通常です。

いわゆる並行差別が生じるのは、時計を販売する上で日本国内で得られた利益を考慮した料金設定と、全く関係ない所で並行輸入された事で利益が得られなかった場合では、その差額分を徴収して補填する意味合いもあります。

×デメリット

修理窓口は専門職の人が担当する為、時計師に直接相談ができない場合が殆どです。

現代では多くのメーカーが自社内で全ての修理を行う事は稀で、提携している他社(下請け)へ作業を委託するの事が一般的になっています。

結果的に作業の一部始終の詳細については把握できず、お客様へのフィードバックも希薄となりがちです。

複数の提携先との取引きをしている場合には、本来ならば最高の技術レベルでの均一化が望ましい筈が、実際にはハードルを下げる事でレベルの均一化を計らざるを得ない事情もあります。

また、ユーザーはメーカー都合の基準値や規定を受け容れる事が求められます。

例えば、年代や難易度によっては本国での作業となり、掛かるコストや時間もユーザーにとっては負担となりがちです。

或いは古い時計だとメンテナンス自体を打ち切ってしまう事もあります。

効率的かつ全てのユーザーに対して公平に運営する必要があるため、個々の細かな注文や部分修理や加工修理には対応しにくい面もあります。

時計修理会社

○メリット

メーカーを問わず、豊富な経験から様々な時計に対しての造詣が深い会社もあり、メーカーからの修理を請け負っているブランドについては専門的なスキルも高く、百貨店や電器量販店の時計修理コーナーをテナントとして運営している大規模な会社であれば、最も多種多様な時計修理の数量をこなしていると思います。

料金的には競争力を上げる目的で、メーカー修理料金よりも更に抑えられている事が多いです。

個人で運営している小規模の修理店もこのカテゴリーに含みますが、メーカーを定年退職されたベテランの時計師であれば、開業する際のイニシャルコストや、その後のランニングコストが低い事もあり、作業内容を鑑みると料金設定が非常に安価な場合もあります。

一方で活躍が目覚ましい若手時計師の場合には、余程の覚悟を持って起業していますので、熱意と勤勉さを併せ持ち挑戦し続ける素晴らしい方も多く、生涯に渡ってお付き合いできる時計師との出逢いにも期待できます。

×デメリット

時計師の在籍数が数十名を超える大規模な会社から、個人の業者まで様々ですので、スキルやノウハウに大きなバラ付きがあります。

テナントを運営している場合には、修理の内容によってはメーカーへの取り次ぎとなり、その際には手数料などが別途必要となる場合もあり、結果的に料金がメーカー修理料金を上回る場合もあります。

また、作業内容によっては提携している業者へ委託する事についてもメーカー修理と同様です。

個人の場合には作業の得意・不得意やリスクを考えた結果、内容によっては断られるケースもあると思います。

時計店

◯メリット

普段から懇意にされているお店へ直接修理依頼できるので安心感がありますし、店舗にとっても信頼関係の構築のチャンスですので、価格や納期を含めてユーザーを優遇する傾向があります。

アンティークや中古品を取り扱う店舗であれば専門的な知識も高く、価値を損なう危険を回避するアドバイスも貰えると思います。

店舗とのコミュニケーション次第では今後のメンテナンス等へのアドバイスや細かなアフターフォローを受けられるのも大きな魅力です。

×デメリット

昔と違い、時計師が常駐し店内で作業が完結できる時計店は少なくなり、多くの場合は他の修理会社や個人の時計師に修理を依頼する時計店が多くなっています。

更には最初からメーカー修理を基本としている時計店も増えています。

そういう流れから、店舗で取引きの無いブランドの修理は難しいと言わざるを得ません。

また、アンティークや中古品を中心に販売しながらも時計師が在籍していない一部の店舗では、販売に関わるコスト削減の日常的な習慣から、安価で低レベルな作業を容認している場合も散見されます。

その事から納得行くまでユーザーが確認した方が良い場合もあります。

時計材料店

○メリット

時計師が工具やパーツの入手先として利用する時計材料店ですが、時計修理を受付けている店舗もあります。

プロ相手の商売がベースですので、料金が最も安い事が多いです。

また、時計材料店ですのでパーツの入手に長けていて、かつ多くの取引先と提携している事から、様々な修理に対応できる守備範囲の広さが強みです。

×デメリット

基本的には受付業務だけですので、修理の細かな内容までは把握し切れない面もあり、提携先も企業や個人と幅広い為に技術レベルの差も生じます。

また、基本的にプロ相手の仕事ですので、対応の良さなどは期待できません。

Webのみで展開している業者

○メリット

メールを中心とした問い合わせを行い、修理品を発送すると完成後に送られて来るシステムで、現代人の生活に寄り添った営業方法であり、特に多忙な方や過度なコミュケーションが煩わしい方に向いていると言えます。

インターネットを利用するので、多くの業者が見付かりやすく、比較もしやすいです。

競争の激しい世界ですので、料金もかなり抑えられていて、効率的に時計修理が完了します。

×デメリット

基本的に提携する多数の修理業者(企業・個人)に委託する事が中心であり、実店舗を持たずに一人の時計師も在籍していない業者もあります。

その分、ランニングコストが低く料金が抑えられる訳ですが、委託先のスキルや請負契約に依存する為、修理自体は料金なりの仕上がりとなる印象です。

低料金に設定する分、非常に多くの修理品を処理する必要があり、効率が重要となる事から難易度の高い修理は断られる事があります。

また、対面接客では無い為に意思疎通の不備や修理後のトラブルについても懸念材料となります。

ゼンマイワークス

○メリット

自社の事ですので饒舌な宣伝となりかねませんが...。

ブランドや年代を問わず、点検や部分修理から、パーツの製作が必要な修復作業と広範囲な時計修理が可能です。

メーカーで断られたり本国送りとなる様な場合でも、基本的には弊社内にて作業は完結します。

万が一、特殊な事例で請負えない場合には解決策をご提案させて頂きます。

スキルや設備のベースがメーカー修理である事から、メーカー修理で培われたプライドと誠意、反対にメーカーの立場では対応できなかった柔軟な発想が強みで、料金以上の結果を意識して作業に臨んでいます。

時計師が直接対応させて頂きますので、ご要望や状況が伝わりやすく、ご納得頂ける結果に繋がります。

×デメリット

少規模かつ丁寧な作業を目指している都合上、納期が長くなる場合があります。

メーカーの料金設定理由を上記で説明している以上、料金に関しては業界に漠然と蔓延している『メーカーの設定料金が上限額』との考え方には全く迎合していません。

これは常に高額になると言う意味ではなく、あくまで時計の状態とお客様の要望によって変動する事が本来であり、メーカーでは設定すらされていない項目が多い為で、現実にはメーカー料金を超える事例はそうそうありませんが、あくまでスタンスとしてご理解下さい。

同時に料金の低価格競争に参加する気持ちは微塵もございません。

お客様からのご期待・ご要望にお応えする修理の為に最大限の作業を行いますので、その対価を他社と比較する事自体が無意味だと捉えている為です。

その方針をネガティブと捉えるか、美点と捉えるかは、お客様に判断を委ねるしかございません。

最後に

最終的に、どの様な方法で修理をご依頼されるかは、お客様の判断にお任せ致します。

Web等のクチコミなどで評判が良かったとしても、実際に担当する時計師までは指定できないと思われますし、極論を言ってしまえば時計師の当日のコンディションによっても結果が変わってしまいます。

勿論、何が何でも弊社をご利用頂こうとは考えてもおりませんし、相談を受けた際に最善だと思われる同業他社をご紹介する事もございます。

時計修理の内容は個々に違う事が普通であり、疑問や違和感を生じた場合には先方に問い合わせてみて、ご自身が納得の行く依頼先を見極めて頂く事が最も重要だと考えます。